「やべえ、氷室だ!みんな隠れろ!」
まるでクモの子を散らしたようにとは・・・まさにこのことで
みな一斉に手近な隠れ場所に身を潜めた
あるものは押入れ
また・・・窓から飛び出してベランダへ隠れたものもいた
部屋の一番奥まった場所にいた俺は
とっさに・・・足元にあった布団をはいでその中に潜り込んだ
ここなら、入り口から見て死角になるはず
そう思った人間が・・・俺以外にもいたのは
小さな・・・・誤算だった
「修学旅行の夜に何をするって、枕投げだろ!」
俺は・・・枕投げみたいに
子供じみた遊びに興じる気持ちは全くなくて
張り切って嬉しそうに枕を投げ合うクラスメートを遠巻きに眺めていた
クラスには・・・男子バスケット部の奴がいた
そいつのところに・・・遊びに来てたのが、同じ部の鈴鹿って奴だった
エネルギーが有り余っている様子の奴らは・・・
バスケットのボールを扱うように
嬉々として・・・枕を放り投げ合っている
「せんせ〜い、男子の部屋がうるさいで〜す」
入り口でそんな声がして・・・大騒ぎの大部屋に女子がやってきた
入ってきたのは・・・俺は名前も知らない女子だった
「お!紺野いいとこにきたぜ、おめえも参加しろよ」
鈴鹿がそう言うと・・・紺野と呼ばれたその女子は
「え〜〜、だってぇ〜〜ねえ、どうするちゃん」
そういって振り返った・・後ろに隠れていたのは・・・だった
は・・・俺と同じクラスで
俺にとっては・・・特別なクラスメートだ・・
一年の後半あたりから・・・少しずつデートを重ねるようになった
お互いに・・・クラスメートという枠を超えることなく
ただ・・・一緒の休日を過ごす・・・そんな仲だった
は・・・モジモジしながら・・・部屋に入ろうかどうか迷っている様子だった
そんなの手を・・・紺野は半ば強引に引っ張って・・・
結果・・・二人の女子が部屋に入った
「じゃ、女相手に何人もってのはまずいから、ダブルス組んで対戦しようぜ」
「枕投げのダブルス?鈴鹿くん相変わらず変なのぉ〜」
「んだとぉ〜紺野おめえは俺に枕をぶつけられてぇらしいな、手加減しねぇから覚悟しろよ!」
「え?!ダメだよぉ、鈴鹿くんにぶつけられたら、身が持たないもん、嫌だよぉ」
「んじゃ、おめえは俺と組め、で・・・えっと、後ろにいんの、名前は?」
無遠慮に事を進める鈴鹿に聞かれ、が初めて口を開いた
「あ・・・、です」
「おめえは、誰と組む?」
「え・・・私も枕投げするの?」
「ちゃん、ちょっとだけ遊んでいこうよ、ね?」
紺野がの手を握って・・・目配せした
どうやら・・・紺野というこの女子の目当ては・・・鈴鹿で
は・・・ただ一緒についてきただけらしい
そんな事実が把握できて・・・俺は少し安堵した
「、誰と組むか決めろよ」
「あ・・えっと・・・どうしよう・・・」
は不安そうな眼差しで・・・俺を見た
「じゃ、と組んで俺と対戦するチャレンジャーは・・誰か立候補いねえのか?」
鈴鹿の問いかけに・・・・部屋中から一斉に「俺!俺!」と声がかかる
俺は・・・この状況で・・・迷っている暇などない事を感じると・・・
枕を手に・・・の隣に立った
「お!さっきから眺めていただけの奴が、いよいよ参戦するらしい」
「ああ・・・・」
「、こいつでいいか?」
「うん」
が・・・ほんの少し頬を染めたような気がした
それは俺の希望的勘違い・・・・かもしれないけれど
「おっしゃ〜手加減しねえぞ、覚悟しろよ」
鈴鹿の声とともに・・・枕が一気に飛び交った
周りにいる生徒のはやし立てるような嬌声が響き
部屋中をほこりが舞う
どちらかというと・・・のんびり屋のは・・・
鈴鹿の投げる枕を避けきれず・・・そのまま顔面に直撃
「いった〜い!!」そう言うと
・・・顔を赤くさせて・・・本気になって投げ返していた
俺も・・・くだらないと馬鹿にしていた枕の投げあいに
いつの頃か夢中になっていった
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